1. 京都大と量子科学技術研究開発機構の共同研究
これまで、物を見た際の短期記憶には脳の「側頭皮質前方部」という領域が重要であると考えられていました。しかし、その詳しい仕組みについては多くの謎がありました。今回の研究では、人に近い脳構造を持つマカクザルを実験対象として用いることで、視覚記憶に関する新たな発見がなされました。
実験では、11種類の図形の中から無作為に選ばれた1つの図形をサルに提示し、数秒後に2種類の図形を見せて直前に見た図形を選ばせるという方法が採用されました。サルが正しく図形を選んだ場合には、報酬としてジュースが与えられました。
脳の神経活動を詳しく調べた結果、目の上部付近に位置し、意思決定にも関わるとされる「眼窩前頭皮質」が、見た図形を覚える際に重要な役割を果たしていることが分かりました。さらに、人為的に眼窩前頭皮質の働きを抑制した場合、視覚機能自体には影響がなかったものの、サルが正しい図形を選ぶ確率が著しく低下することが確認されました。
この成果は、視覚記憶のメカニズムをより深く理解する手助けとなり、認知症や他の記憶障害の原因を解明し、新たな治療法を開発するための重要なステップとなるでしょう。研究は今後も続けられ、さらなる発展が期待されます。
2. 側頭皮質前方部の役割
量子科学技術研究開発機構と京都大学の合同研究チームは、この側頭皮質前方部の働きを解明しようと試みました。彼らはまず、人間に非常に近い脳構造を持つマカクザルを用いた実験を行いました。実験では11種類の異なる図形をランダムに一つサルに見せ、数秒後に2種類の図形を提示して最初に見た図形を選ばせるという方法を採用しました。サルが正しい図形を選ぶと報酬としてジュースが与えられる仕組みです。
この実験の結果、目の上部に位置する眼窩前頭皮質が、見た物を記憶する際に活動が非常に高まることが明らかとなりました。また、この眼窩前頭皮質が正しく働かないように操作すると、視覚的な機能は保たれていたものの、サルたちは図形の正答率が下がることが確認されました。これは、物を見ることとそれを記憶することが別々の脳の領域で管理されていること、そして側頭皮質前方部が見た物の短期記憶において重要な役割を持っていることを示しているのです。
この発見は、認知症などの記憶障害の治療法開発に大きな可能性を示しています。例えば、側頭皮質前方部を標的とした治療法やリハビリテーション法が開発されることで、記憶障害に苦しむ患者の生活の質が劇的に向上する可能性があります。今後のさらに詳細な研究と新しい治療法の開発に期待が寄せられています。
3. マカクザルを使った実験
実験では、まず11種類の図形から無作為に1つを選びマカクザルに提示しました。数秒後に2種類の図形を見せ、最初に見せた図形を正しく選ぶとジュースを与えるという形で進められました。このプロセスを通じて、脳の神経活動が観察されました。
観察の結果、脳の「眼窩前頭皮質」という部位が、マカクザルが見た図形を覚える際に活発に活動することが分かりました。眼窩前頭皮質は目の上部付近に位置し、意思決定や感情、社会的判断などに関与する部位として知られています。人為的に眼窩前頭皮質の働きを抑制すると、視覚機能は正常に保たれたままでしたが、2種類の図形から最初に見せた図形を選ぶ正答率が下がることが確認されました。
この結果、眼窩前頭皮質が短期記憶における重要な役割を果たすことが示されました。これまで短期記憶におけるこの部位の詳細な機能は不明でしたが、この研究によって新たな知見が得られたのです。この発見は、記憶障害の原因解明や治療法の開発に大きな一歩となることでしょう。
4. 眼窩前頭皮質の機能
この部分の脳が活発化することで、私たちは見た図形を効果的に覚えることができます。
京都大学と量子科学技術研究開発機構の研究チームは、サルを使った実験でこの脳のメカニズムを明らかにしました。
この実験では、11種類の図形から無作為に一つの図形を選び、それをサルに提示した後、数秒間置いてから2種類の図形を再度提示し、最初に見た図形を正確に選ぶかどうかを検証しました。
その中で、眼窩前頭皮質が活発に働いていることが判明しました。
さらに、この眼窩前頭皮質の機能を人為的に抑制すると、視覚そのものは正常であるにもかかわらず、正答率が低下することが確認されました。